目次
穀物とは、イネ科(禾本科などとも呼ばれる)に属する植物の種である。食用の穀物の例として、小麦、米、トウモロコシ、大麦、えん麦、ライ麦、ライ小麦(小麦とライ麦の交配種)、キビ、ブルグル、およびモロコシなどがある(1)。イネ科ではないが、全粒穀物性の原材料にはキヌア、アマランサス、およびソバのような擬似穀物も含まれる。全粒穀物は外層に糠があり、炭水化物の豊富な胚乳と呼ばれる中間層と、内側の胚芽の層がある(図1参照)。全粒穀物食品は、穀粒をそのまま、あるいは割ったり潰したり粉状にしたりして種全体を含み、そのままの穀粒と同じ割合で糠、胚乳、胚芽が保持されている(1)。全粒穀物はビタミン、ミネラル、食物繊維、およびリグナンや植物ステロールなどの植物性化学物質を含む潜在的に有益な化合物が豊富である(2)。これらの化合物のほとんどは穀物の糠や胚芽に存在し、ともに精白(製粉)過程で失われて、でんぷん質の胚乳部分だけが残る(1)。精白した穀物の多い食事に比べて、全粒穀物の豊富な食事はいくつかの慢性疾患のリスク減少と関連がある。全粒穀物の健康効果は、それに含まれる個々の栄養素や植物性化学物質の有益性によって全部説明できるわけではない。全粒穀物は健康を増進し疾病を予防する、エネルギーと微量栄養素、および植物性化学物質の独特な集合体である(3)。
全粒穀物食品が何からできているかを定義する世界的に認められた定義がないため、全粒穀物の摂取が健康や疾患の結果を表すマーカーに与える影響を調べた研究を比較することは難しい。米国食品医薬品局(FDA)は、重量で51%以上の全粒穀物原材料を含む食品、または1回分の量である1オンス(約30g)につき8g以上の全粒穀物を含む食品に対して、全粒穀物の健康強調表示を認めた(4)。国際的な多領域にわたる専門家集団は、1オンスあたり8g以上の全粒穀物含有量のある食品を「全粒穀物」と表示するように最近提唱した(5)。しかしながら、現在までのところ全粒穀物食品を摂取することの健康効果を調べたほとんどの疫学的研究は、重量で25%以上の全粒穀物を含み、且つ糠を添加した食品を対象としている(6)。
385,868人の参加者による8つの大規模前向きコホート研究の最近のメタ解析で、総穀物および全粒穀物の高摂取は、低摂取に比べて2型糖尿病発症リスクの有意の低減と関連があることがわかった(7)。一方で、258,078人の被験者による6つの前向き研究のメタ解析では、精白した穀物の摂取と糖尿病との間には何の関係もなかった(7)。特に、毎日3サービング数の全粒穀物食品を摂ることは、糖尿病リスクの32%の低下と関連があった(下記の「全粒穀物の1サービングの例」の項参照)。さらなる解析で、全粒穀物を単独の食品(たとえば玄米や小麦ふすまなど)として、あるいは食品の原材料(たとえば全粒穀物のパンや全粒穀物のシリアルなど)として高摂取すると、低摂取の場合に比べて糖尿病リスクが大きく減ることがわかったが、白米や小麦胚乳などの精白した穀物ではそうではなかった(7)。また、米国での医療従事者追跡調査(HPFS)と2つの看護師健康調査(NHS I, NHS II)という3つの大規模前向きコホート研究の統合解析で、白米の摂取が最も多い上位5分の1(週に5サービング数以上)の参加者は、最も少ない下位5分の1(月に1サービング未満)の者に比べて2型糖尿病リスクが17%高く、玄米の摂取では週に2サービング数以上の者は月に1サービング未満の者に比べて11%リスクが低かった(8)。興味深いことに、50g/日(2/3サービング/日)の玄米またはその他の全粒穀物を同量の白米に置き換えると、糖尿病リスクの16%以上の低下が予想された(8)。
全粒穀物は、食後血糖を改善することで2型糖尿病リスクを減らすと仮定されてきた。食事の直後は血糖と脂質濃度が上昇し、膵臓からのインスリンの分泌が組織でのブドウ糖および脂質の貯蔵を促進する。食後の高血糖や高脂質が長引くことは、酸化ストレス、炎症、インスリン耐性、および内皮機能障害と関連し、そのすべてが2型糖尿病のような慢性疾患の発症に寄与する(9)。糠や胚芽を除去してしまう精白プロセスは、炭水化物の豊富な胚乳の消化を促進する。そのように精白した穀物由来の炭水化物は、全粒穀物に比べて血糖をより高く、またより速く上昇させ、インスリン需要を高める(10)。しかしながら、精白した穀物由来の食品に比べて、全粒穀物製品は血糖を上昇させる能力、つまり血糖指数(GI)が必ずしも低いわけではない(11)。GIの概念は、消化、吸収、および代謝されやすい炭水化物を含む食品はGIが高く(GI値が70以上)、食後の血糖反応が低下するゆっくり消化される炭水化物を含む食品はGIが低い(GI値が55以下)という考えに基づく(「血糖指数および血糖負荷」の項の記事参照)(12)。全粒穀物を含もうと含むまいと、パン、シリアル、米、および菓子製品はGIが高いものも低いものもある(11)ので、全粒穀物の含有量よりは食品のタイプが食後の血糖濃度に影響することが示唆される。
いくつかの観察研究では、全粒穀物の摂取が多いと、健康な個人ではインスリン抵抗が低くなり(13)、インスリン感受性が高くなる(14)という関連があった。11人の体重過多または肥満の成人による対照交差試験で、全粒穀物の豊富な食事を6週間摂取したら、精白した穀物の多い食事よりもインスリン抵抗に関するいくつかの臨床測定値が下がった(15)。しかしながら、メタボリック症候群の61人の成人による最近の無作為化対照試験で、いくつかの全粒穀物シリアル製品の食事を12週間しても、精白した穀物の食事に比べて、空腹時の血漿中のブドウ糖、インスリン、脂質の濃度、またはインスリン抵抗には何の影響もなかった。それでも、食後の血漿インスリンおよびトリグリセリド(中性脂肪)は、全粒穀物中心の食事では大きく下がったが、食後血糖値はそうではなかった(16)。食後のインスリン応答が下がったのは、組織のインスリン感受性が上がったことと関連しているのかもしれない(3)。20人の健康なボランティアによる別の介入試験では、標準的な朝食に全粒大麦パンを3日間摂取したら、精白した小麦のパンの同じ食事に比べて食後のインスリンの最高値が下がった。全粒大麦パンの摂取は、消化管に関わるホルモン(たとえばペプチドYYやグルカゴン様ペプチド)の血中濃度の上昇や、消化管での発酵活性の活発化とも関連があった。このことから、消化におけるホルモン制御の改善と、結腸における難消化性デンプン(難消化性食物繊維)の発酵の改善(17)が示唆され、おそらくそれが満腹感を起こさせ(18)、インスリン感受性を増大させた(19)のであろう。
全粒穀物の摂取は、食後の高血糖を和らげるというよりも、むしろインスリン感受性を良くしているのかもしれない。しかしながら、全粒穀物の摂取がどのように2型糖尿病の予防に役立つのかをより良く知るためには、よく考えられた、大規模な無作為化対照試験が必要である。
1998-2010年に出版された10の大規模前向きコホート研究のメタ解析で、全粒穀物の摂取が最も多い(毎日、約3サービング)の場合は、全粒穀物の摂取が最低の場合に比べて、いくつかの心血管疾患(CVD)リスク要因に対して補正をした後での冠動脈性心疾患(CHD)、虚血性心疾患、心不全、および虚血性脳卒中を含むCVDリスクの21%の低下と関連があることがわかった(20)。さらに、エビデンスは今のところ限られているものの、全粒穀物の摂取は心血管疾患のリスク要因である高血圧のリスク低下と関連がある可能性がある(21,22)。
精白した穀物に比べて、全粒穀物は心血管疾患のリスク低下と関連する栄養素が豊富である。42,850人の男性による米国の医療従事者追跡調査(HPFS)で、全粒穀物の摂取が最も多い上位5分の1の者(49.6g/日)は、最少の下位5分の1の者(3.3g/日)に比べて、年齢、性別、およびCHDリスク要因について補正した後のCHDリスクの16%の低下と関連があった(23)。食物繊維、葉酸塩、マグネシウム、マンガン、ビタミンB6およびビタミンEのような全粒穀物に含まれる栄養素に対してさらに補正すると、統計的に意味が無いくらいの関連しかなかった。このことは、微量元素と食物繊維の含有量が全粒穀物摂取による心血管系への良効果を説明できることを示唆している。全粒穀物の高摂取および精白した穀物の低摂取に伴う心血管保護効果には、血中脂質プロファイルの向上や無症状の炎症を示すマーカー値の減少も含まれる。
21の無作為化対照試験のメタ解析で、全粒穀物を4-16週間摂取するようにしたら、個人の空腹時ブドウ糖、インスリン、総コレステロールおよびLDLコレステロールの血中濃度が改善され、拡張期血圧(最低血圧)および収縮期血圧(最大高血圧)の低下が示された(20)。これと同様に、1988-2015年に出版された23の無作為化対照試験の最近更新されたメタ解析では、全粒穀物(28g/日-213g/日を2-16週間)、特に全粒えん麦入りのシリアルやその他の製品を2週間ほど摂取すると、精白した穀物の対照群の食事に比べて、中性脂肪、総コレステロールおよびLDLコレステロールの血中濃度が有意に低下したことが示された(24)。全粒穀物ミックスの製品(パン、ミューズリー、そのまま食べられるシリアル、パスタ、米、チップス、マフィン、クッキー)の介入試験でも、血中HDLコレステロールの濃度が改善した(24)。さらに、小麦の食物繊維が血清コレステロール濃度を下げるとは示されなかったが、多くの臨床研究で、えん麦の食物繊維や大麦の水溶性食物繊維の摂取を増やすと、総コレステロールおよびLDLコレステロール濃度が控えめに減少することが示された(25-27)。そのような発見に照らし合わせて、米国食品医薬品局(FDA)は全粒穀物とCHDリスク低減に関して、えん麦(オートブラン、オートミール、全粒えん麦粉)または全粒大麦の水溶性食物繊維であるβグルカンを少なくとも3g/日摂取できる低飽和脂肪および低コレステロールの食事に健康強調表示を認めた(28)。全粒穀物は、コレステロールの腸での吸収を妨げることで血清コレステロールを下げる化合物である植物性ステロール類の供給源でもある(2)。
観察研究からのエビデンスで、全粒穀物の摂取と心血管疾患および代謝疾患を特徴づける軽度の慢性炎症との逆相関が示唆された(29)。しかしながら、介入試験の結果はまちまちである。全粒穀物をあまり摂取しない健康な消費者による最近の交差試験で、全粒穀物ミックスの摂取を6週間増加させた場合(平均で168g/日)の効果と、全粒穀物を16g/日未満摂取する場合とで比較を行った。全粒穀物の摂取を増加させても、血液中の免疫細胞(白血球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞)の絶対数、これらの細胞の生体外での食作用活性、または血液中の炎症のマーカー(IL-10、TNF-α、C反応性タンパク質(CRP))などに何の効果もなかった(30)。健康な正常体重、体重過多、および肥満の被験者を対象に以前に行われた無作為化対照試験も、全粒穀物の摂取が炎症マーカーにもたらす効果を示すことはできなかった(31-35)。80人の体重過多または肥満の被験者による8週間の食事介入試験で、彼らの習慣的な食事に含まれていた精白穀物製品を全粒小麦製品に代えたら、精白小麦の摂取に比べて、炎症誘発性サイトカインTNF-αの大幅な減少、抗炎症性IL-10の一時的増加、およびCRPの無変化という結果になった(36)。別の無作為化交差介入試験では、体重過多/肥満の子供(8-15歳)に全粒穀物製品のリストを渡して、6週間の間、毎日穀物の半分を全粒穀物食品で摂取するようにする(全粒穀物群)か、これらの食品摂取をまったくしない(対照群)ように頼んだ。毎日平均98gの全粒穀物製品摂取(対照群は11g/日)で、CRP、sICAM-1(水溶性細胞間接着分子1)、急性期タンパク質SAA(血清アミロイドA)、およびレプチンの血清濃度が下がった(37)。低カロリー食をしているメタボリック症候群の肥満の成人に全粒穀物摂取を毎日約5サービング分増加させると(1サービング未満の場合に比べて)、CRPの血中濃度が下がったが、IL-10とTNF-αの濃度には何の影響もなかった(38)。研究によって結果が一貫しないのは、参加者の健康状態、介入期間、および/または選択された全粒穀物のタイプによるものであるかもしれない。特に、血糖指標(GI)の低い食品が心血管代謝および炎症のマーカー値を下げることができる(39)としたら、GIの高い全粒穀物で精白穀物の製品を代替することは、心臓疾患リスクに関して何の有益性も示さないかもしれない。
様々なタイプのがんに対する全粒穀物の防護効果は、2型糖尿病や心血管疾患に対する効果に比べて確立されていないが、多くの症例対照研究で全粒穀物の摂取とがんリスクとの逆相関が見られている(40-42)。20種類の異なるがんを調べた40例の症例対照研究の初期のメタ解析で、全粒穀物の摂取が多い者は少ない者に比べて、がん全体のリスクが34%低いことがわかった(40)。全粒穀物の高摂取は、口腔、咽喉、食道、胃、結腸、および直腸のがんを含む消化管がんのリスク低減と最も一貫した関連が認められた。61,000人以上のスウェーデン人女性を15年間追跡した前向きコホート研究で、毎日4.5サービング以上の全粒穀物を摂取していた者は、毎日1.5サービング以下しか摂取しなかった者に比べて結腸がんのリスクが35%低いことがわかった(43)。米国国立衛生研究所(NIH)による291,988人の男性と197,623人の女性を対象とした全米退職者協会(AARP)の食事と健康に関する大規模な前向き研究で、上記のスウェーデンのコホート研究よりもずっと少ない平均全粒穀物摂取でも、結直腸がん、特に直腸がんのリスクとの逆相関が認められた(44)。特に、全粒穀物摂取が最上位の5分の1の者(2.6サービング/日)は、最下位の5分の1の者(0.4サービング/日)に比べて、直腸がん発症リスクの36%の低下と関連が認められた(44)。多機関が参加した欧州におけるがんと栄養に関する前向き研究(EPIC)の参加者を含むコホート内症例対照研究で、全粒小麦および全粒ライ麦の摂取の代用マーカーである血漿アルキルレゾルシノール濃度が高い上位4分の1の者は、それが低い下位4分の1の者に比べて、遠位結腸がん発症の52%の低下と関連することがわかった。直腸がん、結腸がん、および近位結腸がんの発症、または結直腸がん全体の発症との相関は報告されなかった(45)。腸がんに対して全粒穀物が防護的であるということを、すべてのコホート研究が示唆しているわけではない(46、47)。しかしながら、6つのコホート研究の結果に基づく用量反応解析で、毎日3サービング分(90g)の全粒穀物の摂取増加による17%の結直腸がんリスクの低下がわかった(48)。注目すべきは、EPIC研究の一部であり110,000人超の参加者がいるスカンジナビアでの3つのコホート研究を最近解析したところ、全粒穀物総摂取と食道がんリスクとの逆相関が示されたことだ。全粒小麦摂取が10g増えるごとに、食道がんリスクの50%低下と関連することがわかった。そのような関連は、全粒ライ麦や全粒えん麦では見られなかった(49)。
精白穀物製品と対照的に、全粒穀物は、がん、特に消化管のがんに対して防護的な可能性のある多くの化合物が豊富である(50)。全粒穀物は食物繊維の主な摂取源であり、食物繊維の摂取が多いと結腸の便通を速くして、潜在的に発がん性のある化合物が結腸の内面に並ぶ細胞と接触する時間を減らすと考えられている(51)。食物性の繊維は、食物繊維が結腸の微生物叢によって発酵する時に発生する短鎖脂肪酸を介して化学保護的効果も働かせる可能性がある(52)。全粒穀物は、フェノール酸、リグナン、フィトエストロゲン(植物エストロゲン)、フラボノイド、およびビタミンEなどの化合物を含み、それががんの発症を促進するシグナル伝達経路を変更したり、消化管で潜在的に有害な遊離金属イオンと結合したりするのかもしれない(53、54)。
最近の大規模前向きコホート研究で、全粒穀物の摂取と全死因および死因ごとの死亡リスクとの関係が調べられた。367,442人の年配の成人を対象にしたNIHによるAARPの食事と健康に関する研究で、全粒穀物摂取が多い(約36g/日相当)と、少ない(約3.9g/日相当)場合に比べて、全死因の死亡リスクが17%低いという関連があった(55)。全粒穀物の高摂取は、心血管疾患(17%減)、がん(15%減)、2型糖尿病(48%減)、呼吸器疾患(11%減)、および感染症(23%減)による死亡リスクの低下とかなり関連があった。これらの関連は、穀類の食物繊維摂取について補正した後では大きく減っていたため、死亡に対する全粒穀物の防護効果において、食物繊維が主要な役割を果たしていることを示唆している(55)。74,341人の女性を対象にした看護師健康調査(NHS)と43,744人の男性を対象にした医療従事者追跡調査(HPFS)という米国の2つの前向きコホート研究の最近の解析で、全粒穀物摂取が最多の上位5分の1の者は、最少の下位5分の1の者より全死因の死亡リスクが9%低いと報告された(56)。全粒穀物の高摂取は心血管疾患に関する死亡リスクが15%低いという関連もあったが、がん関連の死亡との相関は見つからなかった。さらに、全粒穀物摂取と死亡率との関連は、110,000人超の参加者によるスカンジナビアHELGAコホート研究でも調べられた(57)。このコホート研究で、全粒穀物製品の摂取を倍増すること、または特定の全粒小麦、全粒ライ麦、または全粒えん麦の製品の摂取を倍増することが、全死因および死因別死亡リスクの減少と関連があった。
米国および北欧でのコホート研究のこれらの結果は、早期の死亡の予防に全粒穀物摂取が果たす役割を一貫して示唆している。
全粒穀物および食物繊維の豊富な食事は、便を軟化してかさを増やしたり、結腸での通過を早めたりして、便秘の症状を予防または改善したりする可能性がある(58,59)。そのような食事は、結腸での小さな曩(憩室)の形成が特徴的な憩室症という症状のリスク低下とも関連がある。憩室症のあるほとんどの人は何の症状もないが、約10-25%が憩室炎という痛みや炎症になる可能性がある(58)。先進国で小麦粉の製粉が始まる前には憩室炎は実質的になく、食物繊維の少ない食事が憩室性疾患の発症に果たす役割はよく理解されている(60)。もし食物繊維の多い食事が憩室性疾患リスクを減少させる(61,62)なら、食物繊維の摂取源(たとえば穀類、果物、野菜など)が重要なのかもしれない。興味深いことに、穀類からの食物繊維の摂取を5g増やすと、英国で690,075人の女性(平均年齢60歳)を6年間追跡したコホート研究で、憩室性疾患リスクが14%減り、果物と野菜の食物繊維摂取を5g増加させると、憩室性疾患リスクがそれぞれ15%と5%減った(62)。食物繊維の多い食事は、すでにできてしまった憩室を解消するというより、新しくできるのを防ぐために憩室症の患者に推奨されている(58)。憩室症の者は、食物繊維の多い食事をしない場合は特に、憩室に小さな種や殻が詰まって憩室炎になるのを防ぐためにそれらを食べないようにアドバイスされることがある(58)。しかしながら、種やポップコーンを食べることを避けることが憩室症の個人の憩室炎リスクを下げることを示す研究がないことに留意すべきである(60)。
前向きコホート研究は一貫して、全粒穀物摂取が肥満度指数(BMI)の低下、および体重増加や肥満のリスク低下と関連があると示唆してきた(6,20)。しかしながら、1988-2012年に出版された無作為化対照試験の最近のメタ解析で、全粒穀物の摂取(18.2g/日-150g/日を2-16週間)は、慢性的な健康上の症状がない2,060人の正常体重または体重過多/肥満の成人の体重(26研究)、体脂肪(7研究)、および腹囲(9研究)に何の大きな影響もないと報告された(63)。メタボリック症候群で体重過多/肥満の60人の個人による、最近の無作為化非盲検対照試験では、最初の6週間に体重維持食を摂り、その後6週間に低カロリー食を摂るという12週間の介入期間の間、全粒穀物の摂取(約6-12サービング/日)と、同量の精白穀物の摂取との比較を行った(64)。全粒穀物の摂取増加は、体重、BMI、体脂肪率、または腹囲に関しては、精白穀物の摂取でも見られた程度の減少以上にそれらを減らすことができなかった。注目すべきは、全粒穀物を摂取した個人は精白穀物を摂取した個人に比べて、空腹時血糖が改善を示したものの、その他の心血管代謝の変数は変化しなかったことである(64)。これらの結果は、精白した穀物に比べて全粒穀物が体脂肪率により良い影響をもたらすことを示すその他のエネルギー制限食事介入試験と対照的である(38,65)。全粒穀物摂取が体重調整に役立つか否かを明らかにするための、さらなる研究が必要である。
毎日3サービング分に近い全粒穀物の摂取は、全粒穀物摂取が比較的低い集団での慢性疾患リスクのかなりの低減に関連していた。米国保健福祉省および米国農務省が共同で発行している2015-2020年版の米国人のための食事ガイドラインでは、摂取する全穀物の少なくとも半分が全粒穀物であること、および精白穀物を全粒穀物に置き換えて全粒穀物の摂取を増やすことを推奨している(66)。2015-2020年版の米国人のための食事ガイドラインでの全粒穀物のサービング(分量)の計測単位は、オンス当量(oz-eq)である。全粒穀物の1サービング(分量)は、(1)すぐに食べられる100%全粒穀物の食品1オンス(約30g),(2)部分的に全粒穀物が入っている製品2オンス、または(3)16gの全粒穀物原材料を含む食品の量に相当する(67)。表1は、全粒穀物摂取に関する2015-2020年版の米国人のための食事ガイドラインのまとめである。
ライフステージ | 年齢 | 1日の摂取量(オンス当量/日)*3 | 1日の摂取量(グラム/日)*4 |
---|---|---|---|
幼児 | 2-3歳 | 1.5-2.5 | 24-40 |
子供 | 4-8歳 | 2-3 | 32-48 |
子供 | 9-13歳 | 2.5-4.5 | 40-72 |
青少年 | 14-18歳 | 3-5 | 48-80 |
成人 | 19歳以上 | 3-5 | 48-80 |
1食事ガイドラインは、食事摂取基準(DRI)の数値がない場合に適応される。 |
2009-2010年にかけての米国国民健康栄養調査(NHANES)では、全粒穀物摂取の平均は子供や青少年で0.57オンス当量(約9g)/日で、成人では0.82オンス当量(約13g)/日であったと報告された(68)。約40%の米国人は全粒穀物をまったく摂取せず、子供や青少年の2.9%と成人の7.7%のみが3オンス当量(約48g)/日以上の全粒穀物を摂取している(68)。全粒穀物摂取を増やすことの潜在的健康効果に照らし合わせれば、全粒穀物食品を毎日3サービング分摂るというのは最低限の量であって、可能であればいつでも精白穀物の炭水化物を全粒穀物製品に代えるべきである。
全粒穀物食品には、アマランサス、全粒大麦、玄米や古代米、ソバ(カーシャ)、キビ、えん麦、ポップコーン、キヌア、全粒ライ麦、ライ小麦、全粒小麦(小麦粒)に様々な種の小麦(普通小麦、エンマー小麦、スペルト小麦、およびコーラサン小麦)を混ぜたものを含むことがある(69)。残念ながら、製品ラベルを見てもその製品が全粒穀物または精白穀物から主に作られたのかどうかは常に明白ではない。全粒穀物食品を買う際に使える方法には、以下のようなものがある。
全粒穀物は、多数の生物学的活性を持つ成分の摂取源である。そのいくつかを表2に示す。
主要栄養素 | ビタミン類 | ミネラル類 | 植物性化学物質 |
---|---|---|---|
不飽和脂肪 | 葉酸塩 | マグネシウム | 食物繊維 |
ビタミンE | カリウム | フラボノイド類 | |
セレン | リグナン類 | ||
植物性ステロール類 |
Originally written in 2003 by:
Jane Higdon, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Updated in December 2005 by:
Jane Higdon, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Updated in May 2009 by:
Victoria J. Drake, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Updated in January 2016 by:
Barbara Delage, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Reviewed in January 2016 by:
Simin Liu, M.D., M.S., M.P.H., Sc.D.
Professor of Epidemiology, Professor of Medicine
Brown University
Copyright 2003-2024 Linus Pauling Institute
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