●ナッツは食物繊維、植物ステロール、および不飽和脂肪の良好な摂取源である。(詳細はこちら)
●大部分の前向きコホート研究の結果では、習慣的にナッツを摂取(約28gを少なくとも週5回摂取することに相当)すると、心血管疾患のリスクが大きく減少するという関連があることが示唆される。(詳細はこちら)
●ある前向きコホート研究で、習慣的なナッツの摂取は2型糖尿病の発症リスクの大きな低下と関連があることがわかった。(詳細はこちら)
●大部分の前向き研究で、習慣的にナッツを摂取する者は滅多に摂取しない者より体重が少ないことが示されている。そうは言っても、大部分のナッツは約28gでほぼ160kcalのエネルギーがあるので、他のあまり健康でないお菓子をナッツに代えることは、ナッツの摂取を増やす際に体重増加を避けるよい方法である。(詳細はこちら)
あまり遠くない昔には、ナッツは脂肪含有量が比較的高いので不健康だと考えられていた。対照的に、習慣的なナッツの摂取は健康的な食事の重要な一部であることが、最近の研究では示唆される(1)。ナッツの脂肪含有量は比較的高い(約28g中14~19g)が、ナッツの大部分の脂肪はより健康的な一価不飽和脂肪および多価不飽和脂肪である(表1参照)(2)。「ナッツ」という用語は、アーモンド、ブラジルナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカデミアナッツ、ピーカン、ピスタチオ、クルミ、およびピーナッツを含む。その名に反して、ピーナッツ(peanut)は実はえんどう豆(pea)やインゲン豆(bean)と同じ豆類である。しかしながら、ピーナッツは栄養的に木の実のナッツと似ていて、いくつかの同じような有益な特性がある。
大規模前向きコホート研究で、習慣的なナッツの摂取は冠動脈性心疾患(CHD)リスクの大きな低減に一貫して関連があった(3)。ナッツの摂取に予防効果があることを見つけた初期の研究の一つがアドベンティスト健康研究で、これは30,000人超のセブンスデー・アドベンティスト(キリスト教アドベンティスト派信者)を12年にわたって追跡したものである(4)。一般的に、セブンスデー・アドベンティストの食事や生活習慣は、平均的なアメリカ人のそれよりも心血管疾患予防に勧められるものに近い。アドベンティスト健康研究に参加した者はほとんどが喫煙せず、大部分の者が平均的なアメリカ人よりも飽和脂肪が少ない食事をしていた。この健康的な集団において、ナッツを週に少なくとも5回食べる者は、週に1回未満しか食べない者よりもCHDによる死亡リスクが48%、非致死性心筋梗塞(MI)のリスクが51%低かった(4)。83歳超のセブンスデー・アドベンティストにおいては、週に少なくとも5回ナッツを食べる者は、週に1回未満しか食べない者よりもCHDの死亡リスクが39%低かった(5)。3,000人超の黒人男女によるより小規模な前向き研究でも、同じような結果が報告された(6)。週に少なくとも5回ナッツを摂取する者は、週に1回未満しか食べない者よりもCHDの死亡リスクが44%低かった(5)。
ナッツの心臓保護効果は、セブンスデー・アドベンティストに限ったものではない。14年間に86,000人超の女性が参加した看護師健康調査で、週に約142g超のナッツを摂取する者は、月に約28g未満しか摂取しない者に比べてCHDのリスクが35%低かった(7)。同様の低下は、非致死性MIのリスクやCHDによる死亡リスクでも見られた。より最近の21,000人超の男性医師による17年間の研究で、週に少なくとも2回ナッツを摂取する者は、ナッツを滅多にまたはまったく食べない者に比べて心臓突然死のリスクが53%低かったことがわかったが、非致死性MIや急死でないCHDによる死亡のリスクにおいては大きな減少はなかった(8)。この男性医師の集団の追跡調査分析で、ナッツの摂取は心不全の発生と関連がないことがわかった(9)。閉経後の女性30,000人超を12年間追跡した米国のアイオワ女性健康調査は、ナッツ摂取とCHDの死亡率との間に大きな逆相関が見られないとした唯一の前向き研究論文であるが、ナッツを週に2回摂取する者は全死因による死亡率に若干ではあるが有意義な減少が見られた(10)。全体的に大部分の前向きコホート研究の結果は、習慣的なナッツの摂取はCHDに関連する死亡リスクの大きな減少に関連があることを示唆している。実際、上記した米国における疫学研究のうちの4つに対する最近の統合解析で、ナッツ摂取が最も多い(週に約5回)者はCHDリスクが35%低かったことがわかった(11)。対照臨床試験の結果からは、ナッツの心臓保護効果の少なくとも一部は、血清総コレステロール濃度およびLDLコレステロール濃度に対する有益な効果に由来することが示唆される(3)。少なくとも18の対照臨床試験で、飽和脂肪の少ない食事にナッツを加えると、血清コレステロールが正常または高い者に血清総コレステロール濃度およびLDLコレステロール濃度の大きな減少があったことがわかった。これらの効果は、アーモンド(12~15)、ヘーゼルナッツ(16)、マカデミアナッツ(17~19)、ピーナッツ(20,21)、ピーカン(22)、ピスタチオ(23,24)、およびクルミ(25~30)で見つかった。より最近のある横断研究では、ナッツや種子を頻繁に食べると、多民族集団で炎症性バイオマーカーの血清濃度が低くなることに関連があることがわかった(31)。エビデンスが状況的ではあるものの、これらの発見はナッツに含まれる化合物が炎症を減らすことで心血管疾患のリスクを低下させているかもしれないことを示唆している。
食事の飽和脂肪をナッツに含まれるような多価不飽和脂肪や一価不飽和脂肪に代えると、血清総コレステロール濃度およびLDLコレステロール濃度を下げる可能性がある(3)。しかしいくつかの臨床試験では、ナッツ摂取によるコレステロール低減効果は、ナッツに含まれる多価不飽和脂肪や一価不飽和脂肪の含有量から予想されるよりも大きかった。このことは、ナッツにそれ以外の予防的要素があることを示唆している(32)。コレステロール低減効果に寄与するかもしれないナッツのその他の生物活性化合物には、食物繊維や植物ステロールがある(33)。特定のナッツの不飽和脂肪、食物繊維、および植物ステロール含有量については、表1を参照されたい。クルミはαリノレン酸というオメガ3脂肪酸が特に豊富で、心臓突然死につながるかもしれない心不整脈の予防などの多くの心臓保護効果がある。ナッツの心臓保護効果に寄与するかもしれないその他の栄養素には、葉酸塩、ビタミンE,およびカリウムがある(3,33~35)。米国食品医薬品局(FDA)は、ナッツに関する以下のような限定的健康強調表示を承認して、ナッツの摂取と心血管疾患リスクとの関係について最近出現しているエビデンスを認めている(36):「飽和脂肪とコレステロールが少ない食事の一部として、ほとんどの種類のナッツを1日に約42g食べることによって心疾患のリスクが減少する可能性があることが、科学的なエビデンスで証明されていないが示唆はされている。」ナッツの栄養素含有量に関する詳細は、米国農務省の国民栄養データベースを参照のこと。
看護師健康調査の最近の結果、ナッツとピーナッツバターの摂取が女性の2型糖尿病(DM)リスクと逆相関があるかもしれないことが示唆された(37)。16年間追跡対象となったこの86,000人超の女性集団では、週に少なくとも5回約28gのナッツを摂取する者は、めったにあるいはまったく摂取しない者に比べて2型糖尿病の発症リスクが27%低かった。同様に、ピーナッツバターを週に少なくとも5回摂取する者は、めったに摂取しないかまったく摂取しない者に比べて、2型糖尿病の発症リスクが21%低かった。これらの発見はその他の研究でも確認される必要があるが、これらはナッツが健康な食事の要素になりうることの追加的エビデンスとなる。観察された2型糖尿病の減少に寄与しているかもしれないナッツの化合物は、不飽和脂肪、食物繊維、およびマグネシウムである。
主要な懸念は、ナッツの摂取を増やすと体重増加や肥満を起こすのではないかということだ。しかし、アドベンティスト健康研究(5)や看護師健康調査(7)を含む大規模コホート研究のいくつかの横断解析で、習慣的にナッツを摂取する者はめったに摂取しない者に比べて体重が低い傾向があることが示された。最近、スペインで実施された28ヶ月の前向き研究で、ナッツをより多く摂取した参加者はめったに摂取しなかった者に比べて、体重増加のリスクが低かったことがわかった(38)。同様の関連は、看護師健康調査IIでも観察された(39)。これらの疫学データは、自由に生活している被験者においては、ナッツをより多く摂取しても大きな体重増加は起こらず、むしろ食事にナッツを入れることで体重管理に有益であるかもしれないことを示している。ナッツのタンパク質や食物繊維の量がより多いことが、満腹感を起こして空腹感を抑えるのかもしれない。
ピーナッツや木の実のナッツ(アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーカン、ピスタチオ、およびクルミ)に対するアレルギーは、最も一般的な食物アレルギーの一種で、米国の人口の少なくとも1%に影響している(40)。すべての食物アレルギーは重篤な反応を引き起こす可能性があるが、ピーナッツや木の実のナッツは命にかかわるアレルギー反応であるアナフィラキシーに最も一般的に関連する食品の一つである(41)。重篤なピーナッツや木の実のナッツのアレルギーのある者は、ラベルをチェックしたりラベルの無いスナック、キャンディー、およびデザートを避けたりして、ピーナッツや木の実のナッツをうっかり口にすることがないように特別に用心する必要がある。意図せずにピーナッツや木の実のナッツを摂取することを避けるためのさらなるアドバイスについては、食物アレルギーおよびアナフィラキシーネットワークのウェブサイトを参照のこと。
セレンの豊富な土壌のあるブラジルの地域で育ったブラジルナッツは、一粒のナッツに100μg超のセレンが含まれている可能性があるが、その一方でセレンのあまりない土壌で育ったものはその10分の1の含有量であるかもしれない(42)。セレンの毒性についての詳細は、「セレン」のタイトルの記事を参照のこと。
約28gのナッツを週に5回といった習慣的なナッツの摂取は、疫学研究において冠動脈性心疾患(CHD)のリスクが一貫して大きく減るという関連がある。飽和脂肪の少ない食事の一部として毎日約28~57gのナッツを摂取すると、血清総コレステロールおよびLDLコレステロールを下げることが、多くの対照臨床試験でわかっている。約28gのナッツは少なくとも160kcalあるので、その他の食物を除かないで習慣的な食事に毎日28gのナッツを単純に追加すると、体重が増えるかもしれない。その他のより不健康なスナックやメインデッシュの肉の代わりに塩を付けていないナッツにすることは、ナッツを健康な食事の一部にするための方法である。表2はナッツに含まれるいくつかの有益性のありそうな化合物のリストである。
主要栄養素 | ビタミン | ミネラル | 植物性化学物質 |
---|---|---|---|
不飽和脂肪 | 葉酸塩 | マグネシウム | 食物繊維 |
ビタミンE | カリウム | 植物ステロール |
Originally written in 2003 by:
Jane Higdon, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Updated in December 2005 by:
Jane Higdon, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Updated in June 2009 by:
Victoria J. Drake, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University
Reviewed in June 2009 by:
Frank B. Hu, M.D., Ph.D.
Professor of Nutrition and Epidemiology
Harvard School of Public Health
Copyright 2003-2024 Linus Pauling Institute
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