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要約

  • イソフラボンは、フィトエストロゲン(エストロゲン活性を有する植物由来の化合物)の一種である。ヒトの食事において、イソフラボンをもっとも豊富に含むものが大豆と大豆製品である。(詳細はこちら)
  • 無作為化(比較)対照試験の結果として、50g/日の動物性タンパク質の摂取を大豆タンパク質に代えることによって、LDLコレステロールが、僅かに約3%弱減少することが示唆されている。精製した大豆イソフラボンを含むサプリメントでは、血清脂質プロファイルに良好な影響を及ぼす傾向はみられていない。(詳細はこちら)
  • 一日あたり90mg未満の大豆イソフラボンの摂取は、骨吸収を妨げ、骨形成を活発化するかもしれない。(詳細はこちら)
  • 概して、多くの観察研究の結果は、成人において大豆イソフラボンの高用量の摂取が乳がんを予防するという見解を支持していない。限られた研究にて、若い頃に大豆食品をより多く摂取することが、成人期における乳がんの危険性を減少させるかもしれないことが示唆されている。(詳細はこちら)
  • 科学者は、大豆イソフラボンが前立腺ガンの進行を防ぐか、もしくは抑制する可能性について興味を抱いているが、観察研究において大豆イソフラボンが前立腺ガンを予防するという証拠は限られており、一貫性がない。(詳細はこちら)
  • 現在までに、更年期症状に対する大豆イソフラボン摂取の影響に関する研究は、さまざまな結果が報告されている。(詳細はこちら)
  • 大豆イソフラボンに関するいくつかの健康効果は、イソフラボンの代謝物質であるエクオールが生産されるかどうかに依存しているかもしれない。(詳細はこちら)
  • 大豆や大豆製品を主とする食事は安全で潜在的に有益に見えるけれども、大豆イソフラボンのサプリメントを高用量、長期に渡って摂取したときの安全性はまだわかっていない。(詳細はこちら)
  • 現在、大豆を主成分とする調製粉乳で育てられた幼児が、牛乳を主成分とする調製粉乳で育てられた幼児よりも、有害な影響を受けるリスクがより大きいという、確定的な証拠は全くない。(詳細はこちら)

序説

イソフラボンは、エストロゲン様の作用を有するポリフェノール化合物である。この理由から、それらはフィトエストロゲン(エストロゲン活性を有する植物由来の化合物)として分類される(1)。ヒトの食事においてイソフラボンをもっとも豊富に含むものが、豆類(特に大豆)である。大豆において、イソフラボンは配糖体(糖が結合した化合物)として存在する。 大豆または大豆製品の発酵や消化の過程において、イソフラボン配糖体から糖分子が遊離し、その結果、そのアグリコンであるイソフラボンが生じる。大豆イソフラボン配糖体は、ゲニスチン、ダイジン、グリシチンと呼ばれ、一方、それらのアグリコンはゲニステイン、ダイドゼイン、グリシテイン(Figure 1.イソフラボンのアグリコン部分の化学構造)と呼ばれる。特に明記しない限り、本稿に記載されている多くのイソフラボンの量は、その配糖体ではなく、アグリコンを指す。

Soy Isoflavones Figure 1. Chemical Structures of Soy Isoflavone Aglycones

代謝と生物学的利用能

大豆イソフラボンの生物学的影響はそれらの代謝に強く影響される。そして、大豆イソフラボンの代謝は、ヒトの腸に生息するバクテリアの活動に依存している(2)。たとえば、大豆イソフラボンのダイドゼインは、腸においてダイドゼインより高いエストロゲン様活性を有する代謝物質であるエクオールや若しくはより低いエストロゲン様活性を持つ他の代謝物質に代謝される可能性がある。大豆を摂取後に尿中に排出されるエクオールを測定する研究では、西洋人の約33%が、ダイドゼインをエクオールに代謝することが示されている(3)。このように、イソフラボンの代謝における個体差が、これらのフィトエストロゲンの生物活性と密接に関連する可能性がある。

生物活性

エストロゲン活性と抗エストロゲン活性

大豆イソフラボンは、エストロゲン様、あるいはホルモン様の弱い活性を有することが知られている。エストロゲンは、細胞内でエストロゲン受容体と結合することによって、効用を発揮するシグナル分子である(Figure 2)。エストロゲン受容体の複合体は、エストロゲン応答性遺伝子の発現を変化させるためにDNAと相互作用する。エストロゲン受容体は、再生に関連する組織以外にも、骨、肝臓、心臓と脳を含む数多くの組織中に存在する(4)。大豆イソフラボンと他のフィトエストロゲンは、エストロゲン受容体と結合することができる。そして、いくつかの組織ではエストロゲン様の効用を示し、また別の組織ではエストロゲンに対してアンタゴニス(阻害剤)として機能する(5)。再生組織中における抗エストロゲン効果が、ホルモン関連の癌(乳がん、子宮癌、前立腺癌)における危険性の低下を助けることが示唆されている。一方、他の組織におけるエストロゲン効果は、骨密度を維持し、血中脂質プロファイル(コレステロール値)の改善に役立つことも示唆されている。このような知見より、科学者は、フィトエストロゲンの組織選択的活性に興味を抱いている。ヒトにおいて、大豆イソフラボンが発揮するエストロゲン効果と抗エストロゲン効果の程度については、現在、かなり多くの科学的研究の焦点となっている。

Soy Isoflavones Figure 2. Chemical Structures of Some Endogenous Estrogens

エストロゲン受容体に依存しない活性

大豆イソフラボンとそれらの代謝物質は、エストロゲン受容体との相互作用と無関係な生物活性も有する(6)。大豆イソフラボンが、エストロゲン代謝に関係する特定の酵素による合成および活性を阻害することによって、内在性エストロゲンとアンドロゲンの生物活性を変えるかもしれない(7-9)。また、大豆イソフラボンは、チロシン・キナーゼ(細胞増殖を促進するシグナル経路で決定的な役割を果たす酵素)を阻害することがわかっている(10)。その上、イソフラボンは、in vitro 実験において抗酸化剤として機能することができる(11)。しかしながら、それらがヒトの抗酸化状態に貢献する程度については、まだ明白でない。一日あたり2mgのイソフラボンを含む大豆タンパク質を摂取させた場合より、一日あたり56mgのイソフラボンを含む大豆タンパク質を摂取させた場合のほうが、2週間後における血漿 F2-イソプロスタン(生体内における過酸化脂質のバイオマーカー)の値がかなり低下した(12)。しかしながら、50-100mgの精製した大豆イソフラボンを含むサプリメントの日々の摂取では、血漿または尿中の F2-イソプロスタンの値に有意な変化は確認されなかった(13,14)

疾患予防

心血管疾患

血清コレステロール

1995年以前に実施された対照臨床試験にて、一日あたりに摂取する25-50gのタンパク質を動物性タンパク質から大豆タンパク質に代えることにより血清LDLコレステロール値がおよそ13%低下すると示唆された(15)。しかしながら、最近のより良い対照試験では、大豆タンパク質のLDLコレステロール低下効果はずっと小さいことが示されている。22例の無作為化対照試験に対する最近のレビューでは、一日あたりに摂取するタンパク質の50gを動物性タンパク質から大豆タンパク質に代えることにより、LDLコレステロールが約3%だけ低下すると結論づけている(16)。イソフラボンを含んでいない大豆タンパク質より、イソフラボンを含んでいる大豆タンパク質のほうがLDLコレステロールの低下により有効であるという証拠は限定的であるが(17,18)、しかし、大豆イソフラボンだけ(サプリメントや抽出物として)の摂取では、血清脂質プロファイルに良い影響を与えているようには見えない(16,19-21)。大豆タンパク質とコレステロールに関するさらなる情報については、「豆類」に関する項目を参照。

動脈の機能に対する影響

心血管疾患予防において、正常な動脈機能を維持することは、重要な役割を担っている。心血管疾患にかかる危険性が高い人々は、血管の内表面に沿って並んでいる内皮細胞から生産される一酸化窒素に応答して拡張する動脈の働き(内皮依存性血管拡張)が損なわれている(22)。現在までに実施された大豆イソフラボンの動脈機能に対する効用についての無作為化対照試験の結果は、まちまちである。しかしながら、閉経後の女性達に一日あたり最高80mgの大豆イソフラボン(23-25)、または最高60gのイソフラボン(26-30)を含む大豆タンパク質を補った、多くのプラセボ対照試験において、内皮依存性血管拡張についての顕著な改善は確認されなかった。動脈の硬さは、動脈機能のもう一つの基準である。動脈の硬さの測定は、動脈の伸展性を評価する。そして、動脈の硬さとアテローム性動脈硬化症の間の強い関係が認められている(31)。プラセボ対照臨床試験にて、3ヶ月間、40g/日の大豆タンパク質(118mg/日の大豆イソフラボンを含む)を摂取した男性および閉経後の女性においてみられた結果と同様に(29)、5週間の80mg/日の大豆イソフラボン抽出物をサプリメントとして摂取した閉経後の女性は、動脈の硬さが有意に低減した(32)。大部分の研究では、大豆タンパク質またはイソフラボンの補足が内皮依存性血管拡張を改善することを示していないが、予備段階の研究では、大豆イソフラボンのサプリメントの摂取が、動脈の硬さを低減させるかもしれないことを示唆している。しかしながら、最近実施された高血圧のヒトを対象とした無作為化対照・交差試験における、6ヶ月間の118mg/日のイソフラボンを含む大豆タンパク質の摂取では、動脈の硬さを含む動脈機能の測定において改善は確認されなかった(33)。大豆イソフラボンによるサプリメントが動脈の機能を向上させるかどうか決定するためには、さらなる研究が必要である。

ホルモンに関連する癌

乳癌

大豆食品から平均25〜50mg/日のイソフラボンを摂取するアジアにおける乳がん発生率は、西欧諸国において平均2mg/日未満のイソフラボンを摂取する非アジア系女性の乳がん発生率に比べて、より低い(34,35,36)。しかしながら、この違いには遺伝的要因や生活様式の違いなどの多くの要因が関与しているかもしれない。食事での大豆の摂取と乳がんに関する疫学的研究論文では、矛盾する結果が報告されている(豆類の項目参照)。2、3の研究では、思春期における、大豆のより高い摂取量が、将来の(37,38)乳がんになる危険性を低減させるかもしれないことが示唆されている(37,38)。現時点では、大豆イソフラボンのサプリメントを摂取ことが、乳がんの危険性を減少させるという証拠はほとんどない。大豆の消費と乳がんの危険性に関する、これ以上の情報については、豆類の項目を参照してください。

子宮内膜癌

子宮内膜(子宮の)癌の発達は、長期にわたるエストロゲン暴露(女性ホルモンの一種、プロゲステロンでバランスが取られていないため、エストロゲンが持続分泌している状態)に関連しているので、抗エストロゲン活性を有するフィトエストロゲンを多く摂取することで、子宮内膜癌を予防することができると提案されている(39)。この考えを支持し、3件の後ろ向き症例対照研究において、子宮内膜癌の女性が、癌でない対照群と比較して食品からの大豆イソフラボン摂取量が低いことが判明している(39-41)。しかしながら、閉経後の女性に対し、6ヶ月間、120mg/日のイソフラボンを含む大豆タンパク質を摂取させたが、外因性エストラジオールの投与によって誘発される子宮内膜増殖症を防ぐことができなかった(42)。症例対照研究において、大豆食品の消費と子宮内膜癌が逆相関することに関するいくつかの証拠が示唆されているが、大豆イソフラボンのサプリメントを摂取することが子宮内膜癌に罹るリスクを低減するという介入試験における証拠はない。

前立腺癌

米国の前立腺癌における死亡率は、日本や中国などのアジア諸国に比べて非常に高い。しかしながら、疫学的研究において大豆食品の高い摂取量が前立腺癌の発症リスクを低減するという確固たる証拠は示されていない。大豆食品と前立腺癌の危険性に関する詳細な情報については、豆類の項目を参照してください。細胞培養実験と動物実験において、大豆イソフラボンが前立腺癌の進行を抑制するという潜在的な効果が示唆されている(44)。前立腺癌を発症していない男性における最高1年間の大豆イソフラボン・サプリメントの摂取では、前立腺特異的抗原(PSA)の血清濃度の有意な低下はみられなかったが(45-47)、前立腺癌患者における2例の小規模な研究においては、大豆イソフラボン・サプリメントの摂取が、前立腺腫瘍の成長と関連する前立腺特異的抗原(PSA)の血清濃度の上昇を緩やかにするようである(48,49)。前立腺癌患者に関する1例の小規模、且つ、短期(<1ヵ月)の研究では、無作為に低フィトエストロゲン食(50)を摂った男性達と比較して、無作為に高フィトエストロゲン食を摂った男性達が、統計的に有意なPSA濃度の改善を示すことが明らかとなった(50)。PSA性再発前立腺癌の男性を対象とした豆乳サプリメント(141mg/日のイソフラボン)の摂取試験の結果、試験以前はPSA値が毎年56%増加していたのと比較して、12ヶ月以上の試験期間中では、平均20%程度の増加に留まっていたことが判明した(51)。2006年に発表されたレビューにおいて、前立腺癌患者に対するイソフラボン・サプリメントの摂取試験8例中4例において、PSA濃度において好ましい影響がみられたことが報告されている(52)。その上、最近の8つの研究のメタ解析において、イソフラボンの摂取が前立腺癌の危険性を低減することと関係していることがわかったが、しかし、その相関は統計的に有意でなかった(53)。このような予備調査結果は有望視されるが、大豆イソフラボン・サプリメントが前立腺癌の予防や治療に効能を有するか否かを決定するためには、現在進行中である、より大規模な無作為化対照試験の結果が必要である(54)

骨粗鬆症

西洋人より、大豆食品を消費しているアジア人の方が、一般的に股関節部骨折率が低いことが知られているが、西洋人における大豆イソフラボンの消費を増やすことが骨粗鬆症を防止するのを助けるかどうかはまだ明らかではない(55)。大豆の摂取量の増加が骨形成と骨吸収の生化学的マーカーに及ぼす影響を評価するための短期臨床試験(6ヵ月以下)の結果は、矛盾している。閉経後の女性を対象としたいくつかの比較対照試験において、大豆食品、大豆タンパク質または大豆イソフラボンの摂取量を増やすことが、骨吸収と骨形成のマーカーを改善するか(56-59)、骨損失を減らすこと(59,60)が示唆されている。しかしながら、別の試験では、大豆の摂取量の増加が有意な利点を示すことはなかった(61-64)。大豆の摂取量の増加が骨密度(BMD)の低下や骨粗鬆症骨折を実際に防ぐことができるかどうかを確定するためには、より長期間の無作為化対照試験が必要である。2件の比較対照臨床試験において、イソフラボンを含んでいる大豆タンパク質のサプリメントを摂取した閉経後の女性が、同量のミルクタンパク質のサプリメントを摂取した場合よりも、6ヵ月にわたるBMD損失がかなり低いと示されている(62,65)。しかしながら、閉経後の女性を対象とした、より長期間の2つの試験では、イソフラボンを含んでいる大豆タンパク質のサプリメントを摂取した場合とミルクタンパク質を摂取した場合との間にBMD損失における有意差はみられなかった(66,67)。2年間の臨床試験の結果、イソフラボンを含有する豆乳を毎日摂取すると、イソフラボンを含まない豆乳を摂取した場合に比べて、腰椎におけるBMD損失をかなり減少させることが示された(68)。しかしながら、別の3つの試験では、イソフラボンを含有している大豆タンパク質のサプリメントを摂取した閉経後の女性と、イソフラボンを含まないか、もしくは極微量しか含まない大豆タンパク質のサプリメントを摂取した閉経後女性の間に、BDM損失における有意差はみられなかった(68-71)。80mg/日の精製した大豆イソフラボンを摂取した台湾の女性は、プラセボ群に比べて、1年間にわたって腰の骨密度の損失がより低かった。しかしながら、その有意差は、更年期から少なくとも4年経過していて、低体重であって、低いカルシウム摂取量の女性に限られていた(72)。台湾の女性におけるもう一つの研究において、1年間、100mg/日の精製した大豆イソフラボンを摂取した場合、対照群と比較して骨損失をより抑えることが示唆された。しかしながら、200mg/日のイソフラボンのサプリメントを摂取した女性では、全く効果がみられなかった(73)。さらに、ヨーロッパの閉経後の女性を対象とした無作為化対照試験において、1年間、イソフラボンを多く含む食物(110mg/日のイソフラボン)のサプリメントを摂取しても、BMDに有意な影響を及ぼさないことが示されている。最近行われた、60才以上の閉経後の女性を対象とした1年間のプラセボ対照試験では、大豆タンパク質(18g/日)、イソフラボン(105mg/日)、それら単独あるいは併用で、BMDに全く影響を及ぼさないことが示されている(75)。現在までの研究結果は矛盾しているが、しかしながら、近年報告された9件の無作為化対照試験(試験期間、1〜12ヵ月)のメタ解析では、<90mg/日の量での大豆イソフラボンの摂取は、骨吸収を妨げて、骨形成を促すと結論している(76)。一部の著者は、大豆イソフラボンが骨の健康に与える効果は、被験者がイソフラボン代謝物質であるエクオール(上記の代謝とバイオアベイラビリティーの項目参照)を生産するかどうかに依存していると、提案している(77-80)。このことにより、臨床試験間における異なる結果を説明することができるかもしれない。このように、イソフラボンの豊富な食事が骨の損失を防ぐ効果を有するという証拠がいくつかあるが、一方、大豆イソフラボンの摂取量を増やすことが、骨粗鬆症や骨粗鬆症骨折の危険性を低減させるかどうかは明瞭ではない。

認知機能低下

大豆イソフラボンの認知機能への影響に関する科学的な研究は十分ではない。大豆の摂取と認知機能の関係について、中年の時期に少なくとも一週間に2回は豆腐を食べていたというハワイの人たちは、週に1回以下しか食べなかったという人よりも、20-25年後の認知機能テストでは悪いスコアを示しているようだということを調べた観察研究がある(81)。また、老齢の男女に関するインドネシアの研究では、豆腐の摂取は記憶力を悪くする方向に働いており、テンペ(tempe)の摂取は記憶力を改善する方向に働いていた(82)。一方、閉経後の女性に対するいくつかの小規模な臨床試験では、大豆イソフラボンの摂取増加はいくつかの認知機能テストにおける成績の緩やかな改善を6か月間にわたり引き起こしていたかも知れないとしている。60 mg/日のイソフラボンを6-12週間投与された閉経後の女性グループは、絵を覚えているかという認知機能テスト(短期間の記憶力)、反転学習則テスト(learning rule reversals、思考力の柔軟性)、仕事を計画的に行う能力において、プラセボを投与された女性グループよりも良い結果を示した(83,84)。もっと長期の試験としては、6カ月間110 mg/日のイソフラボンのサプリメントを与えられた閉経後の女性グループは、プラセボを与えられた女性グループよりも話し方が流暢になった(85)。6カ月間の交叉試験において、60 mg/日のイソフラボンを投与された女性グループは、プラセボを投与された女性グループよりも、認知能力および全体的な雰囲気の面で大きな改善が見られた(86)。しかしながら、より大規模なプラセボ対照試験では、80mg/日のイソフラボンを6カ月間、あるいは99 mg/日のイソフラボンを1年間投与された閉経後の女性グループでは、記憶力、注意力、話し方の流暢性、動きのコントロール、知能障害を含めた一連の認知機能テストの面で効果は見られなかった(67,87)。最近の8例の試験結果(そのうちの7例が閉経後の女性に対する試験であるが)に関するレビューでは、その半数がイソフラボンの処方は認知機能の改善に関連していたと報告している(88)

疾患治療

更年期症状

ほてり(Hot flushes, flashes)というのは、女性が更年期症状に関して医師の診察を受けることになる主たるきっかけである(89)。ホルモン置換療法に対する強い副作用の心配(90,91)が、更年期症状を経験している女性における植物エストロゲンサプリメント利用に対する関心の高まりにつながっている(92)。ほてりの頻度が増えるにつれて大豆イソフラボンの摂取量を増したときの影響が、多くの無作為化対照試験で調べられている(93-95)。これまでに、そのような試験に対するレビューが少なくとも4件報告されている。2002年に発表されたレビューでは、大豆食品に関する8件の無作為化対照試験のうち1件のみで、ほてりの頻度が有意に減少しており、大豆イソフラボン抽出物に関する5件の対照試験のうち3件で、ほてりの頻度の有意な減少が報告されている(96)。一般に、観測された、いずれの減少もプラセボと比較してやや低いという程度の値(10〜20%)であった。2004年に、10例の無作為化対照試験について調べた系統的レビューでは、4例でのみ、ほてりのような更年期症状の治療における大豆イソフラボン抽出物の有効性が報告されていることを明らかにした(95)。さらに最近になって、もう一つの系統的レビューと12例の無作為化対照試験のメタ解析により、大豆イソフラボンの投与がほてりの回数をわずかではあるが減少させることと関連していることが明らかにされた。この分析において、毎日のほてりの回数が多い女性ほどイソフラボン療法により症状が軽減されていることがわかった(94)。様々な試験について、サプリメントに含まれる特異的なイソフラボンにより分析したレビューで、主としてゲニステインを含むサプリメントの使用が、ほてりの症状を軽減させることが明らかになった(97)。興味深いことに、最近の研究では、イソフラボン代謝産物、エクオール(上記の代謝とバイオアベイラビリティを参照)を産生している女性、すなわちイソフラボン代謝産物が尿中に検出された女性のみが、大豆イソフラボンサプリメントを飲んだ後に、ほてりなどの更年期症状の軽減を経験していたことがわかった(98)。特に乳がんからの生存者は、乳がんの再発を予防することを目的とした治療法によって、より頻繁、且つ深刻なほてりを経験しているかも知れない(99)。しかし、乳がん生存者における無作為化対照試験では、いずれも、大豆イソフラボンの投与がプラセボよりも有意に、ほてりの頻度や重症度を軽減するという効果が認められなかった(100-103)。現在まで、更年期症状に対する大豆イソフラボン摂取の効果に関する研究では、いろいろと交錯する結果が報告されている。

供給源

食料源

イソフラボンは多数の豆類、穀物、野菜の中に少量づつ存在するが、大豆は人間の食物の中では最も濃厚なイソフラボン源である(104,105)。最近の調査では、日本、中国および他のアジア諸国における食物からの平均的なイソフラボン摂取量は、25-50 mg /日の範囲であると報告されている(34)。欧米諸国における食物からのイソフラボンの摂取量はかなり低く、平均的なイソフラボン摂取量は2 mg /日と報告されている(35,36)。アジアにおける大豆を原料とする伝統的な食品としては、豆腐、テンペ、味噌、納豆などがある。枝豆は大豆の品種に入り、収穫されたら緑色の段階で食べられている。欧米諸国で人気を集めている大豆製品は、大豆ベースの肉代替品、豆乳、大豆チーズ、大豆ヨーグルトである。大豆タンパク質分離物のイソフラボン含有量は、その分離方法に依存する。一般的に、エタノール洗浄プロセスによって分離された大豆タンパク質では大部分のイソフラボンが除去されているが、水による洗浄プロセスによって分離されたものでは残っている傾向がある(106)。大豆イソフラボンが豊富ないくつかの食品については、イソフラボン含有量とともに表1にリストアップされている(107)。大豆食品のイソフラボン含有量は、ブランド間で、あるいは同じブランドであっても異なるロット間で大幅に異なり得るので、これらの値はあくまで目安として見なければならない(106)。大豆イソフラボンの豊富な食物が健康に役立つ可能性があるのならば、大豆食品中の大豆イソフラボンの含有量の正確、且つ首尾一貫した表示が必要である。食品中のイソフラボン含有量の詳細情報については、米国農務省の栄養データ研究所(USDA nutrient data laboratory)から入手可能である。

表1 いくつかの食品における全イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステインのアグリコン含有量(107)*
食品 サービング(1食分) 全イソフラボン(mg) ダイゼイン(mg) ゲニステイン(mg)
大豆タンパク質濃縮物 3.5オンス 94.6 38.2 52.8
大豆タンパク質濃縮物(アルコール洗浄) 3.5オンス 11.5 5.8 5.3
ミソ ½カップ 57 22.6 32
茹でた大豆 ½カップ 56 26.5 26.9
テンペ 3オンス 51.5 19.3 30.7
大豆(乾燥焼き) 1オンス 41.6 17.4 21.2
豆乳 1カップ 6.2 2.4 3.7
豆腐ヨーグルト ½カップ 21.3 7.5 12.3
豆腐 3オンス 19.2 8.1 10.1
大豆ホットドッグ 1つ 11 3 6
大豆ソーセージ 3本 10.8 3.3 6.9
大豆チーズ、モッツァレッラ 1オンス 1.9 0.5 0.6
*大豆食品のイソフラボン含有量は、銘柄の違いや、同一銘柄であってもロットの違いにより、大豆食品に含まれるイソフラボン量は大きく左右される(106);そのため、これらの値は、ある指標として利用されるべきものである。

サプリメント

大豆イソフラボン抽出物製品やサプリメントは、米国では栄養補助食品として処方箋なしで利用可能である。これらの製品は標準化されておらず、販売されている大豆イソフラボンの量は大幅に異なっている。また、一部の製品では品質管理も問題である(108)。米国で販売されているイソフラボンサプリメント中のイソフラボン含有量について中立の研究所で試験した結果、試験した製品の約50%で製品中のイソフラボン含有量は、ラベルに書かれている量と10%以上異なっていた(109)

乳児用調製粉乳

大豆ベースの乳児用調製粉乳は、大豆タンパク質分離物から作られており、かなりの量の大豆イソフラボンを含んでいる。 1997年、米国で市販されている大豆ベースの乳児用調製粉乳の総イソフラボン含有量は、32-47mg/L(〜34液量オンス)であった(110)

(以下、翻訳者は表の各欄を個別に訳してるので、そのまま記載します。 倉田 )

表2 いくつかの大豆ベースの乳児用調製粉乳における全イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステインのアグリコン含有量
大豆ベースの調製粉乳 サービング(1食分) 全イソフラボン(mg) ダイゼイン(mg) ゲニステイン(mg)
ミード・ジョンソン社製「Prosobee」、すぐにミルクとして利用できます。 8液量オンス 9.4 4.1 5.3
ロス・ラボラトリー社製「Isomil」、すぐにミルクとして利用できます。 8液量オンス 10.2 4.7 5.5
ワイス-エルスト社製「Nursoy」、すぐにミルクとして利用できます。 8液量オンス 6.4 1.8 3.9

安全性

大豆イソフラボンは、人間によって大豆ベースの食べ物の一部として副作用の徴候もなく長い間消費されてきた(105)。いくつかのアジアの諸国では、食餌中にイソフラボンを摂取している人の75パーセントは、65 mg /日以上も摂取していることが報告されている(111)。大豆または大豆含有製品を多く含んでいる食物は、安全で且つ、基本的に有益であると思われるが、大豆イソフラボンを長期的に多量に摂り続けることの安全性はまだ知られていない。ある一つの研究では、高齢の男性と女性が大豆イソフラボンを毎日100mg、6ヶ月間摂取しても、何も問題はなかった(112)。しかし、イソフラボンの安全性を評価するためには、長期間の研究がさらに必要である。

副作用

乳癌生存者のための安全

乳癌生存者に対する大豆イソフラボンや他の植物性エストロゲンの多量摂取に関する安全性は、科学者や臨床医の間でかなりの議論の余地がある領域である(99,113)。乳がんの再発および乳癌患者に対する大豆イソフラボンの多量摂取の効果については、まだ十分に検討されてきていない。細胞培養と動物実験の結果は相反しているが、ある研究者は大豆イソフラボンが、エストロゲン受容体陽性(ER +)の乳癌細胞(114,115)の増殖を促進することを報告している。大豆イソフラボンやゲニステインの多量摂取は、マウスに移植したER +乳癌細胞の増殖を阻害するタモキシフェンの活性を阻害したが(116)、同様の効果がヒトでも見られるかどうかは知られていない。最近の中国における5042人の女性の乳癌生存者に対して、3.9年間(中央値)にわたり追跡した前向き研究では、イソフラボンが豊富な大豆食品の摂取は、死亡リスクの29%の低減、及び、再発リスクの32%の低減と有意に関連していることを示した(117)。その研究では、大豆イソフラボンの摂取は死亡のリスクを有意ではないが21%減少させること、および癌の再発のリスクを有意に23%減少させることと関連していることが示された(117)。非常に限られた臨床試験データではあるが、大豆イソフラボンの多量の摂取(38-45 mg /日)は、人間の乳房組織中でエストロゲン作用を発揮することを示唆している(118,119)。しかし、乳癌の女性における生検で確認された結果では、大豆イソフラボンを取らなかった対照群と比較したところ、200 mg /日の大豆イソフラボンを補給した場合、手術前の2-6週間に亘って腫瘍の成長が見られなかった(120)。これらの与えられた利用可能データからは、一部の専門家は乳癌、特にER +乳癌の既往歴のある女性は、大豆イソフラボンを含む植物エストロゲンの摂取量を増やすべきではない、と思うだろう(99)。しかし別の専門家は、適度に大豆食品を摂取している乳癌生存者にそれをやめさせるだけの十分な証拠はないと言うだろうし(113)、上に述べた最近の研究(117)では、大豆食品の適度な摂取(11 g /日の大豆タンパク質)は乳癌生存者に有益であることさえも示している。このように矛盾する結果が出ていることから、乳癌生存者における多量の大豆イソフラボン摂取の安全性の確認には、さらに多くの研究が必要である。

大豆ベースの乳児用調製粉乳

大豆タンパク分離物から作られた乳児用調製粉乳は、1960年代半ばから市販されている(121)。米国で販売されている乳児用調製粉乳の25%は大豆ベースの調製粉乳である(122)。大豆ベースの調製粉乳を摂った乳幼児は、比較的多量のイソフラボンに曝され、それらを吸収・代謝するので、生殖能力や免疫機能だけでなく成長や発達の過程における潜在的・長期的な影響に対して関心が提起されている(110,123)。大豆ベースの調製粉乳を与えられた乳児と牛乳ベースの調製粉乳を与えられた乳児を比較した少なくとも6件の臨床試験の結果は、大豆ベースの調製粉乳は生後一年目の成長と発達度の面では正常であることを支持している(124)。母乳、牛乳ベースの調製粉乳、大豆ベースの調製粉乳で育てられた子供の将来に亘る成長と発達度を評価するための前向き研究が、アーカンソー州の児童栄養センターで現在進行中である。調査を開始して5年後でも、大豆ベースの調製粉乳の副作用は観察されていないし、また、それぞれのグループ間で成長と発達度についても差は見られていない(125)。さらに、20-34歳の男女811人に対する後ろ向き研究で、乳幼児の時期に大豆ベースの調製粉乳と牛乳ベースの調製粉乳で育てられた人の比較を行ったところ、大豆ベースの調製粉乳で育てられた女性の方が牛乳ベースで育てられた女性よりも有意に多量の喘息やアレルギー薬を利用していることが報告されたものの、身長、体重、思春期(成熟期)、一般的な健康状態、妊娠結果などの間には差が見られなかった(126)。アメリカ小児科学会(The American Academy of Pediatrics)は最近、大豆ベースの調製粉乳の使用のための指示および禁忌事項を説明する報告書を刊行した(122)。現時点では、大豆ベースの調製粉乳で育てられている乳児の方が、牛乳ベースの調製粉乳で育てられている乳児よりも大きな副作用の危険にさらされているという説得力のある証拠はない。しかし、大豆ベースの調製粉乳で育てられた乳児の成長と発達度に関する長期的な研究は現在でも進行中である(127,128)

甲状腺機能

培養細胞および動物を用いた研究において、大豆イソフラボンは甲状腺ホルモンの合成にとって必要な酵素である甲状腺ペルオキシダーゼ活性を阻害することが見出されている(129,130)。しかし、大豆イソフラボンの多量摂取は、食物からのヨウ素の摂取量が十分である限り、甲状腺機能低下症のリスクを増大させるようには見えない(131)。1960年代に大豆ベースの調製粉乳にヨウ素が添加されて以来、大豆ベースの調製粉乳で育てられた乳児における甲状腺機能低下症の症例は全く報告されていない(132)。十分にヨウ素を摂取している閉経前と閉経後の女性を中心とするいくつかの臨床試験では、大豆イソフラボンの摂取量の増加が、体内の甲状腺ホルモンレベルに臨床的に有意な変化をもたらすという結果は得られていない(133-137)

妊娠

現在までに、ヒトにおけるイソフラボンの豊富な食事が、胎児の発育や妊娠の結果に与える影響に関する研究は行われていないし、妊娠中のイソフラボン摂取の安全性についても確立されていない。

薬物との相互作用

大腸の細菌は大豆イソフラボンの代謝に重要な役割を果たすので、抗生物質療法が大腸の細菌の生物学的活性を低下させることもあり得る(138)。動物実験におけるいくつかの根拠から、大豆イソフラボン、特にゲニステインの多量摂取は、タモキシフェン(tamoxifen、Norvadex)の抗腫瘍効果を阻害する可能性があることが示唆されている (116)。人間における潜在的な相互作用について更に知見が得られるまでは、乳がんを治療または予防するためにタモキシフェンや他の選択的エストロゲン受容体モジュレーター類(SERMs)を服用している人達は、大豆タンパク質サプリメントまたはイソフラボン抽出物を摂取することは避けるべきである(「乳癌生存者のための安全」を参照)。大豆タンパク質の多量摂取は、抗凝固薬であるワーファリンの効果を妨げる可能性がある。 4週間にわたり毎日約16オンスの豆乳を飲用することにより、ワーファリンに特有のことであるが治療可能値以下のINR(プロトロンビン時間)になったという症例報告が1件ある(139)。豆乳を中止して二週間後、INR値は治療可能レベルに戻った。大豆ベースの調製粉乳で育てられた先天性甲状腺機能低下症の乳児においては、甲状腺ホルモンの代替物として必要なレボチロキシン(levothyroxine)の適正量が多くなることが分かっている(132,140)。レボチロキシンを服用しながら大豆タンパク質サプリメントを同時にとっている甲状腺機能低下症の成人においても、甲状腺ホルモンの代替物として必要とされるレボチロキシンの適正量が増加した(141)


Authors and Reviewers

Originally written in 2004 by:
Jane Higdon, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University

Updated in January 2006 by:
Jane Higdon, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University

Updated in December 2009 by:
Victoria J. Drake, Ph.D.
Linus Pauling Institute
Oregon State University

Reviewed in December 2009 by:
Alison M. Duncan, Ph.D., R.D.
Associate Professor
Department of Human Health and Nutritional Sciences
University of Guelph
Guelph, Ontario, Canada

Copyright 2004-2018  Linus Pauling Institute


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